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「一体どうしたというのだ。」
体が、と云ふより声が引つこむと、代りにそこに姿を現したのは盛子だつた。すると、うす暗い台所の板敷の上に眩しいやうな、うすい葉洩れ日のやうな気配けはいが立つた。
「うむ、うむ」
今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。
房一は患者の前にもどつて来た。
「早く早くつたつて、もうお支度はちやんとできてますわ。あなたが遅くかへつて来といて――」
「なんだ、さつぱり判らんぞう」
「わたし、あれらしいのよ」
「さうだ、君はあの時の射撃大会に出たさうだね」
「いゝ恰好で!」
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
と、加藤巡査は無意識に汗の滲み出た額のあたりを指でこすりながら、心配さうに大小の焚火を見やつた。彼の声はしはがれていた。
急いであたりさはりのない返事をすると、今泉はもう隣りの人の方を向いて挨拶をした。